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自爆営業はパワハラになり得る――指針見直しで問われるノルマ管理のあり方

  • Takashi Fukunaga
  • 1月20日
  • 読了時間: 3分

職場におけるパワーハラスメントの考え方は、時代の変化とともに、より明確で厳格な運用へと向かっています。

厚生労働省はパワハラ防止指針の見直しにあたり、従業員がノルマ達成などのために自社の製品やサービスを不本意に買い取らされる、いわゆる「自爆営業」について、一定の要件を満たす場合にパワーハラスメントに該当し得る行為として位置づける改正案を示しています。

自爆営業が指針上の整理として明確になることで、「個人の自発的な協力」と「組織による不当な圧力」の線引きを、より具体的に考える材料が増えることになります。


自爆営業は、古くから小売、郵便、保険など一部の業界で、半ば慣習のように見過ごされてきた側面があります。

しかし、自分の給与を削ってまで自社製品を購入し、見かけ上の売上を作る行為は、本来の健全な経済活動とはかけ離れています。

こうした不健全なノルマ管理が、生活を圧迫し、精神的な健康を損ない得る問題であることを、職場のハラスメントという観点から整理し直す動きが進んでいると言えます。


もっとも、指針に明記されるからといって、自爆営業に関するすべての場面が直ちに一律でパワハラになるわけではありません。

パワハラに該当するかどうかは、従来どおり、優越的な関係を背景とした言動であるか、業務上必要かつ相当な範囲を超えているか、就業環境が害されているかといった要素を踏まえ、個別具体的に判断されることになります。

そのうえで、相談窓口での事実確認や、当事者双方への丁寧な聴取など、実務上の対応の重要性がより強く意識されることになります。


経営やマネジメントの視点から見ても、自爆営業を放置することは、組織の長期的な成長を阻害するリスクを孕みます。

社員の財布に頼らなければ達成できない目標設定は、市場の真のニーズから目を背け、商品力やサービス改善といった本来取り組むべき課題を先送りにしてしまうからです。

今回の整理の明確化は、現場のマネージャーにとっても、数字の作り方そのものを問い直す機会になります。

恐怖心や同調圧力によって短期的な数字を作るのではなく、いかにして従業員の納得感を引き出し、本質的な価値を生み出す組織を作るかという、マネジメントの原点が改めて問われることになるでしょう。


働く一人ひとりにとっても、今回の動きは、自身の身を守るための重要な手がかりになります。

もし職場で「みんな買っているから」「目標に届かないのは努力不足だから」といった言葉で不本意な購入を迫られる場面があれば、その背景に不当な圧力がないかを疑い、相談につなげる視点が大切です。

旧来の悪習を一つひとつ取り除き、誰もが能力を正当に評価され、安心して働ける環境を整えることが、結果として企業の信頼性と持続可能性を高める近道となるはずです。

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