職場の熱中症の死傷者数4割増、死亡者数4割減 ― いま企業が取るべき対策とは
- Takashi Fukunaga
- 1 日前
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近年の猛暑を背景に、職場の熱中症災害は深刻さを増しています。
厚生労働省の集計では、直近の統計で「熱中症による死傷者数は約4割増加」した一方で、「死亡者数は約4割減少」したと報告されています。
一見すると相反するようなこの数字は、私たちに何を示しているのでしょうか。
まず押さえたいのは、「倒れる人は増えているが、命を落とすケースは減っている」という現実です。
つまり、暑さそのものはより厳しくなり、熱中症で救急搬送される人は増えています。
しかし、企業による予防対策や早期対応が進んだ結果、致命的な事故は減少していると考えられます。
これは前向きな変化であると同時に、「対策をやめた途端に、また死亡災害が増えかねない」という警鐘でもあります。
では、どのような要因で死傷者数が増えたのでしょうか。
一つは、気候変動に伴う「暑さの質」の変化です。
最高気温だけでなく、湿度が高く風が弱いなど、体から熱が逃げにくい条件が重なる日が増えています。
また、高齢労働者の増加や、屋外・倉庫内・調理場など高温環境で働く人の多さも影響しています。
さらに、冷房があっても「マスク着用」「省エネ意識」などが重なり、知らず知らずのうちに身体に負担をかけているケースもあります。
一方で、死亡者数が減った背景には、企業や行政による啓発の広がりがあります。
暑さ指数(WBGT)を用いた作業中止基準の導入、こまめな水分・塩分補給、空調設備の改善、クールベストや遮熱シートの活用など、現場の工夫は確実に進んでいます。
また、「具合が悪いと言い出しやすい雰囲気づくり」や、「早めの救急要請」の重要性が浸透してきたことも、死亡事例の減少に大きく寄与しています。
とはいえ、「死ななければよい」という話ではありません。
熱中症で倒れれば、本人は後遺症や体力低下に苦しみ、長期休業に至ることもあります。
企業にとっても、労災補償、休業による生産性低下、代替要員の手配など、無視できないコストが発生します。
「死傷者数4割増」という数字は、現場の負担とリスクがむしろ高まっていることを示しています。
では、企業は今後どのような視点で熱中症対策に取り組むべきでしょうか。
ポイントは「ルール」「環境」「人」の三層で考えることです。
まずルールとして、暑さ指数や気温に応じた作業中止・軽減の基準、休憩時間の増加、服装緩和など、具体的な運用ルールを明文化します。
次に環境として、空調・送風機・遮熱シート・ミスト・飲料の常備など、設備面の投資を検討します。
最後に人の面では、管理監督者と従業員向けに熱中症の症状・応急処置・声かけの仕方を教育し、「おかしいと思ったらすぐ止める」文化を根づかせることが重要です。
特に注意したいのは、入社直後・異動直後の従業員や、高齢者・持病を抱える人です。
これらの方々は熱中症リスクが高く、同じ職場で同じ作業をしていても倒れやすい傾向があります。
健康状態の申告や医師の意見を踏まえた配置、作業量や休憩の調整など、個々の事情に配慮したマネジメントが欠かせません。
「職場の熱中症」は、もはや夏場だけの話ではなく、春先から秋口まで続く通年リスクとなりつつあります。
死傷者数が増えた今だからこそ、死亡事例が減少している流れを一時的なものにせず、「すべての熱中症災害をなくす」ことを目標に、現場に根ざした対策を積み重ねていく必要があります。
自社の対策を振り返り、「やっているつもり」で止まっていないか、改めて点検してみてはいかがでしょうか。

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