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精神障害の労災認定「再審査で支給へ」――基準見直しが示した救済の広がり

  • Takashi Fukunaga
  • 2 日前
  • 読了時間: 2分

仕事が原因で心の健康を損なったとき、その負担が業務によるものだと社会的に認めてもらう「労災認定」は、当事者や家族にとって極めて重要な制度です。

一方で、精神障害の労災は事実関係の整理や評価が難しく、申請しても不支給となるケースがあるのも現実です。


そうした中で注目されたのが、厚生労働省が、認定基準の見直しを踏まえて過去の不支給事案を再点検し、結果として93件を「支給」へ変更したとする公表です。

根拠となるのは、厚生労働省 労働基準局 労災管理課が2024年(令和6年)4月16日に公表した「精神障害等の労災認定基準の改正に伴う審査請求事案等の取扱いについて(結果報告)」です。


この動きの背景には、2023年(令和5年)9月に行われた「精神障害の労災認定基準」の見直しがあります。

見直しでは、現代の職場で起こり得る出来事をより具体的に捉え、出来事が重なった場合の負担の評価などについて、実態に沿う形へ整えていく方向性が示されました。

その結果、従前の基準で整理された事案の中に、見直し後の考え方で評価し直す必要があるものが生じ得るため、再審査(再点検)が行われることになります。


93件という結果が示すのは、単なる「金銭給付の有無」だけではありません。

少なくとも一定の範囲で、これまで十分に拾い切れていなかった業務上の負担が、見直し後の基準では適切に評価され得ることを意味します。

これは、当事者にとっては救済の広がりである一方、企業にとっては、従来「問題になりにくかった」と受け止められていた負担が、より明確にリスクとして可視化されるという側面も持ちます。


もっとも、制度の趣旨は「支給を増やすこと」そのものではなく、業務と発症の関係を丁寧に見極め、適正に判断することにあります。

だからこそ重要なのは、労災申請の局面だけでなく、そもそも申請に至るような状態を未然に防ぐことです。

長時間労働の抑制、ハラスメントの予防と早期対応、相談しやすい窓口と運用、業務の偏りの是正。

こうした基本動作が、結果として最も有効なメンタルヘルス対策になります。


今回の再審査結果は、「心の不調は個人の問題」として片付けるのではなく、職場の負荷や関係性を組織として点検し続ける必要性を改めて突きつけています。

基準の見直しと再点検の流れを、単発のニュースで終わらせず、より誠実な職場づくりへつなげていくことが、いま求められているのではないでしょうか。

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