治療と仕事の両立支援が当たり前になる職場へ――企業が押さえたい実務の要点
- Takashi Fukunaga
- 1月27日
- 読了時間: 3分
医療技術の進歩により、かつては長期入院や離職を余儀なくされた病気であっても、通院しながら仕事を続けられるケースが増えています。
こうした変化を受けて、治療を継続しながら働く人を職場で支える「治療と就業の両立支援」は、企業にとって重要度を増しています。
制度面でも、両立支援に関する取組を進めることが企業に求められる流れが明確になっており、単なる福利厚生というより、人材の確保・定着やリスク管理の観点からも見過ごせないテーマになっています。
両立支援の対象は、がん、心臓病、糖尿病といった継続的な治療が必要な疾病に限りません。
治療の内容や体調の波、副作用の有無、通院頻度は人によって大きく異なります。
そのため「特定の制度を一律に整えればよい」というよりも、本人の状態と業務内容に応じて、現実的な働き方を組み立てる姿勢が重要です。
企業が取り組みやすい対応としては、柔軟な働き方の選択肢を増やすことが挙げられます。
たとえば、半日・時間単位で休みを取りやすくする運用、時差出勤、短時間勤務、在宅勤務やテレワーク、通院日に合わせたシフト調整などです。
ここで大切なのは、これらが「必ず用意しなければならない固定メニュー」というより、本人の治療計画と業務の実態に合わせて組み合わせる“選択肢”である、という整理です。
もう一つの核心は、主治医と職場の情報連携です。
主治医は医学的に「働けるかどうか」を判断できますが、職場の業務負荷や安全上のリスク、繁忙の波までは把握しきれないことが一般的です。
一方で職場は業務内容を把握していますが、医学的な配慮の要点を判断できるとは限りません。
そこで、本人の同意を前提に、就業上必要な範囲に情報を絞って、主治医の意見を得ながら職場側の配慮を決めていくプロセスが、両立支援の質を左右します。
産業医や産業看護職がいる場合は、医学的な見立てと職場実務をつなぐ役割を担いやすく、いない場合でも、様式の整備や窓口の一本化などで運用の安定を図ることができます。
「努力義務」という言葉があると、後回しにできるもののように受け取られがちです。
しかし、少子高齢化が進む中で、経験や技能を持つ人材が病気を理由に離職することは、企業にとって大きな損失になり得ます。
採用と育成にかかるコストを考えれば、今いる社員が治療を続けながら働ける環境を整えておく方が、長期的には合理的なケースも少なくありません。
さらに、支援体制があることは、他の従業員にとっても「万が一のときの安心」につながり、組織への信頼感を下支えします。
これからの職場に求められるのは、病気を抱えることを「特別な弱さ」として扱うのではなく、状況に応じた多様な働き方の一つとして受け止める文化です。
治療と仕事の両立を支える仕組みは、育児や介護など、別の制約を抱える人が働き続けやすい職場づくりとも重なります。
誰もがライフイベントと仕事を両立できる環境を整えることが、結果として人材の定着と企業の持続可能性を支える基盤になっていきます。

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