宿泊・飲食に広がる「残業上限」の現実と、サービスの形の変化
- Takashi Fukunaga
- 2 日前
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2026年2月11日(水)時点の整理です。
時間外労働の上限規制は、働き方改革関連法の流れの中で2019年4月から始まり、中小企業には2020年4月から適用されています。
そして2024年4月には、これまで猶予されていた建設業や自動車運転業務、医師などにも上限規制が本格適用され、「2024年問題」として大きく注目されました。
その「注目の高まり」の陰で、いま宿泊・飲食でも、上限規制が日々の運営を強く縛る局面が目立ってきています。
東京商工会議所が2025年11月に実施し12月10日に公表した調査では、時間外労働の上限規制によって「支障が生じている」と答えた割合が、宿泊・飲食業で55.6%と過半数でした。
この調査は東京商工会議所の会員企業を対象にしたものなので全国平均とは言い切れませんが、少なくとも都市部の中小企業で、影響が“例外ではない”ことを示しています。
支障の中身は、単に事務が遅れるといった話にとどまりません。
人手不足や繁閑差、専門人材の不足が重なると、営業時間を短くしたり、営業日を絞ったり、予約枠を抑えたりして、そもそも提供するサービス量を減らさないと回らない場面が出てきます。
実際、宿泊業では人手不足が続く中で、宿泊予約や客室稼働率に制限を設けて運営するケースがみられる、という指摘があります。
飲食でも、メニュー数の整理や提供方法の簡素化など、「時間を守るために、できることを絞る」動きが起きやすくなります。
ここで押さえておきたいのは、宿泊・飲食は、機械化だけでは置き換えにくい仕事が多いという点です。
接客、調理、清掃、段取りなど、人が関わることで価値が出る部分が大きい業界では、働ける時間が減れば、その分だけ提供できるサービス総量も減りやすい構造があります。
これまで「何とか回す」を長時間労働で埋めてきた事業者ほど、法律という線引きが入ったことで、従来の回し方が通用しにくくなっています。
では、どう乗り越えるかです。
まず事業者側では、全部を守ろうとせず、提供価値が高いところに人手を寄せる設計が必要になります。
予約の取り方、ピークの作り方、メニューやサービスの標準化、仕込みや清掃の手順の見直し、教育の型化など、「人の時間を増やす」のではなく「同じ時間で回る形に変える」ことが中心になります。
DXも、見栄えのためではなく、予約・会計・問い合わせ対応など“時間を食う所”から順に入れていくのが現実的です。
次に避けにくいのが価格の見直しです。
人手が貴重になった以上、サービスの質を維持するには、そのコストをどこかで回収しなければ続きません。
値上げは苦しい判断ですが、値上げしないまま営業時間短縮や予約制限が進むと、売上の上限が先に下がり、体力が削られやすくなります。
そして消費者側も、「いつでも、安く、何でも、フルサービス」という前提を少しずつ更新する必要が出てきます。
予約が取りにくい日があることや、提供方法が簡素になることは、不便さである一方で、現場で働く人の時間と健康を守ることにつながります。
働きやすさと事業の継続を両立させる模索は、宿泊・飲食のサービス文化を“無理の上に成り立つ形”から“続けられる形”へ置き換える作業です。
その変化はすでに始まっていて、これからは「我慢で埋める」のではなく、「設計で回す」ことが競争力になるはずです。

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