原電子会社の過労自死提訴が問うもの――インフラ現場の長時間労働と安全配慮義務
- Takashi Fukunaga
- 1月21日
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2025年8月、日本原子力発電の子会社に勤務していた50代の男性社員の遺族が、過重労働と職場での不適切な対応が原因で男性が自死に追い込まれたとして、会社側を提訴した事案は、インフラ業界における労働環境の厳しさを浮き彫りにしています。
報道によれば、男性は子会社の東海支社に所属し、放射性廃棄物の処理業務の現場責任者として業務に従事していたとされています。
遺族側の主張(訴状等に基づく報道)では、男性は休日出勤を含む連続勤務が続き、2020年2月には12日間の連続勤務があったほか、翌3月にかけて1か月80時間を超える時間外労働があったとされています。
長時間労働が続けば、休息が奪われるだけでなく、判断力や回復力が低下し、精神的な不調を招くリスクが高まります。
この事案では、過重労働に加えて、職場での人間関係の悪化が大きな要素として指摘されています。
遺族側は、上司とのトラブルや不適切な言動があったことも含め、心理的負担が増大していったと主張しています。
長時間労働の下では、通常なら周囲に相談できる状況でも、疲労と孤立感が重なり、助けを求める行動そのものが難しくなることがあります。
訴訟で問われる中心は、会社側がこうした過酷な労働実態を把握しながら、必要な増員や業務調整、相談対応などを適切に行っていたのか、すなわち安全配慮義務を十分に果たしていたのかという点です。
報道では、労災認定がなされていることも示されています。
また、親会社の事業を支える子会社の現場で、これほどまでに負荷が集中していたとすれば、グループ全体としての労務管理のあり方も問われます。
公共性が高く高度な専門性が求められる領域ほど、現場の責任は重くなりがちであり、個人に負荷を集中させる体制や、声を上げにくい組織文化がある場合、リスクは増幅します。
それを個人の資質や精神論に帰してしまえば、同種の事案は繰り返されかねません。
今回の提訴が投げかけるのは、社会を支える企業において、なぜ働く人の命と健康が守り切れなかったのかという根本的な問いです。
長時間労働の是正に加え、指導と叱責の線引きを明確にし、ハラスメントの芽を早期に把握する仕組み、そして過剰なプレッシャーを分散させるチーム体制を整えることは、インフラ維持の前提条件です。
裁判の行方はもちろん、今回の事案をきっかけに、同様の構造的課題を抱える現場におけるメンタルヘルス対策と労務管理の実効性が、改めて問われることになるでしょう。

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