労災保険はどこが変わるのか。労政審「建議」が示した見直しの方向性。
- Takashi Fukunaga
- 10 時間前
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労働政策審議会の労災保険部会が、労災保険制度の見直しについて報告(建議)をまとめ、制度をどう更新していくべきかの大きな方向性が示されました。
今回の建議は、長年の運用上の歪みや、現代の働き方の変化に合わせて制度を整えるという意味で、まさに「総点検」に近い内容になっています。
象徴的な論点の一つが、上乗せ給付にあたる社会復帰促進等事業の「特別支給金」です。
建議では、この特別支給金についても処分性を認め、審査請求や取消訴訟の対象とすることが適当と整理されています。
これまで「制度としてはあるが、争えるかどうかが分かりにくい」と感じやすかった部分を、手続の面から明確にしようとする動きです。
もう一つ、大きな見直しとして挙げられるのが、アスベスト被害などの遅発性疾病における給付基礎日額の考え方です。
建議では、有害業務の最後の事業場を離職した後、別の事業場で就業中に発症した場合に、発症時賃金が、ばく露時賃金を基礎に現行の取扱いで算定した平均賃金より高いときは、発症時賃金を用いることが適当とされています。
これにより、離職時の賃金を起点にした計算だけでは、現在の生活実態に合いにくいという問題を、一定の場面で是正できる方向になります。
一方で、離職後に就業していない期間に発症した場合は、現行の取扱いを維持しつつ引き続き検討する、とされています。
働き方の多様化への対応も、建議の重要な柱です。
フリーランスやギグワーカーといった「雇用によらない働き方」の広がりを踏まえ、現時点で特別加入の対象になっていない事業等について、特別加入対象の拡大を随時検討していくことが適当と整理されています。
今すぐ一気に対象が広がると断定できる段階ではありませんが、セーフティネットを現実に合わせて広げていく方向が明確に示された点は大きいと思います。
また、給付の時効についても、対象を広げて5年に延長することが適当とされ、その中には精神疾患も含まれています。
現代の労災を考えるうえで、心の不調を含めた救済の実効性を高める方向が示されたと捉えることができます。
この建議の内容は、今後、法改正や運用の見直しといった形で具体化されていくことになります。
制度の歪みを正し、働き方の変化にも対応しながら、必要な人に公平に救済が届くようにする。
今回示された方向性は、労災保険を単なる「事後の補償」だけにとどめず、働く人の生活と尊厳を支えるインフラとして磨き直していくための、重要な一歩になりそうです。

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