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がんを抱える従業員から相談を受けたとき、産業保健職が大切にしたいこと

  • Takashi Fukunaga
  • 6 日前
  • 読了時間: 3分

2026年4月から、治療と就業の両立支援は事業主の努力義務になりました。

その中で、産業医や産業看護職、保健師などの産業保健職に求められる役割は、単に健康状態を確認することだけではありません。

本人の思いを受け止めながら、治療と仕事の両方が続けられる道を一緒に探していくことが、いっそう大切になっています。


相談の入り口でまず大切なのは、答えを急がないことです。

がんの告知を受けた直後は、本人の頭の中も気持ちも整理がついていないことが少なくありません。

制度や手続をすぐに並べるより先に、安心して話せる場をつくり、何に不安を感じているのかを丁寧に受け止めることが、その後の支援の土台になります。


その際に忘れてはいけないのが、情報の扱いです。

治療と仕事の両立支援では、主治医や会社、人事労務担当者、産業医などが連携することがありますが、情報共有は本人の同意を得たうえで、必要な範囲に限って行うことが基本です。

「話したことがどこまで共有されるのか」が曖昧なままだと、本人は本音を話しにくくなります。

最初の面談で、情報共有の範囲や進め方を分かりやすく伝えておくことが信頼につながります。


産業保健職の大きな役割は、医療の言葉と職場の言葉をつなぐことです。

主治医の意見は大切ですが、そのままでは職場での業務に落とし込みにくいことがあります。

反対に、会社が抱える不安や判断の迷いも、医学的な視点に置き換えないと整理できません。

だからこそ、本人の業務内容、通院の予定、治療による影響、就業上の配慮の必要性を丁寧に整理し、双方に伝わる形に整えることが重要になります。


支援を進めるうえでは、最初から「復職できるか、できないか」の二択にしないことも大切です。

厚生労働省のガイドラインでは、必要に応じて主治医や産業医等の意見を踏まえ、両立支援プランを作成することが示されています。

働き方は、フルタイムか休職かだけではありません。

時差出勤、短時間勤務、時間単位の年次有給休暇、在宅勤務などを組み合わせながら、その時点で無理のない働き方を探していく視点が欠かせません。


また、支援の主役はあくまで本人です。

周囲が良かれと思って配慮を先回りしすぎると、かえって本人の希望や仕事への思いを置き去りにしてしまうことがあります。

産業保健職には、会社の事情だけでも、医療の事情だけでもなく、本人がどう働きたいのかを中心に据えて支援を組み立てる姿勢が求められます。


両立支援コーディネーターの考え方も、この場面では参考になります。

厚生労働省の資料では、両立支援コーディネーターは、患者に寄り添いながら継続的に相談支援を行い、主治医と会社の連携の中核として、両立に向けたプラン作成の支援などを担う存在とされています。

産業保健職も、まさにそのような橋渡し役としての力が問われる場面が増えています。


がんと仕事の両立支援は、特別な場面だけの話ではありません。

相談を受けた最初の一言、情報共有の進め方、本人の希望の聴き方、働き方の調整の仕方。

そうした一つ一つの積み重ねが、安心して働き続けられる職場をつくっていきます。

産業保健職の支援は、制度の説明だけで終わるものではなく、本人が仕事を手放さずに済む道を一緒に探す、実践そのものだと言えそうです。

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