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高年齢労働者の労災防止の「努力義務化」―安全配慮義務との関係と、今のうちに押さえたい視点―

  • Takashi Fukunaga
  • 1 日前
  • 読了時間: 3分

2026年4月1日から、高年齢労働者の労働災害防止について、事業者が必要な措置を講じることが法律上の「努力義務」として位置付けられました(労働安全衛生法)。

同じ日に施行された「治療と仕事の両立支援」と同様、すべての企業が対象となる改正であり、人事・労務担当者として基本的な考え方を押さえておくことが重要です。


まず前提として、高年齢労働者の安全確保は、今回の改正がなくとも、従来から「安全配慮義務」として企業に求められていたものです。

高齢者就業の増加に伴い、高年齢労働者の労災発生件数や、転倒・墜落など比較的軽微な事故であっても重篤化しやすい傾向が指摘されてきたことから、国として「高年齢者の就労実態を踏まえた災害防止措置」をあらためて指針として示し、取組みを促す趣旨と整理できます。


厚生労働大臣が公表した指針では、高年齢労働者の労災防止に関し、企業が留意すべき事項としておおむね次のようなポイントが挙げられています。

第一に、安全衛生管理体制の中で、高年齢労働者の災害防止を明確に位置付けることです。

具体的には、年齢構成や配置状況を把握したうえで、どの職場・作業に高年齢者が多いかを整理し、リスクの高い作業の洗い出しや、職場巡視の際のチェック項目への反映などが想定されます。

第二に、職場環境面の改善として、段差・階段・足元の滑りやすさ、照度不足といった「転倒につながりやすい要因」や、重量物の取扱いや不自然な姿勢を強いる作業など、高年齢者の身体的負担が大きい作業の見直しが挙げられています。


あわせて、高年齢労働者本人の健康・体力の状況を踏まえた対応も、指針上の重要な柱とされています。

例えば、定期健康診断や医師の意見等を踏まえ、必要に応じて深夜業や長時間残業を制限する、段階的な業務内容の見直しを行う、特定の持病がある方については暑熱・寒冷環境での作業に配慮する、といった対応が挙げられます。

また、安全衛生教育の場面では、若年層向けと同じ内容を一律に繰り返すだけでなく、高年齢労働者に多い災害事例や、加齢に伴う体力・反応速度の変化を踏まえた注意点を盛り込むことが推奨されています。


人事・労務担当者の立場からは、今回の改正を機に、「自社の高年齢者雇用の状況を一度可視化する」ことが一つの出発点になります。

例えば、どの年代層まで就業しているか、どの職種・部署に60歳以上が集中しているか、過去数年の労災・ヒヤリハットの年齢別傾向はどうか、といった情報を整理すると、重点的に確認・対策すべき職場が見えやすくなります。

そのうえで、既存の定期健康診断や安全衛生委員会の議題として「高年齢労働者の災害防止」を位置付けるかどうか、現場と相談しながら検討していく流れが考えられます。


なお、「努力義務」であることから、直ちに具体的な罰則が科される性質のものではありませんが、万一、高年齢労働者の重大災害が発生した場合には、会社としてどの程度リスク把握や配慮を行っていたかが問われる可能性があります。

2026年4月は、子ども・子育て支援金制度の創設や治療と仕事の両立支援の努力義務化など、多様な人材の就業継続を支える改正が重なっている時期でもありますので、高年齢労働者の安全確保も、その一環として位置付けておくと整理しやすくなります。

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