過労死等防止対策白書が示す変化――医療・福祉分野と女性の精神障害事案の増加
- Takashi Fukunaga
- 2025年12月22日
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厚生労働省が公表した最新の「過労死等防止対策白書」において、精神障害に関する労災保険給付の請求・支給決定の動向に、注目すべき変化が表れています。
全体の件数が増加傾向にある中で、とりわけ「医療、福祉」分野における請求件数の増加と、女性労働者による精神障害事案の増加が目立つ結果となりました。
白書によると、業種別に見た精神障害の労災保険給付請求件数では、「医療、福祉」が全業種の中で最も多い状況が続いています。
医療・福祉分野は従来から件数の多い業種でしたが、近年はその増加傾向がより顕著になっています。
また、性別ごとの内訳を見ると、女性の請求件数が大きく増加している点も特徴の一つです。
白書の統計からも、精神障害に関する労災請求に占める女性の割合が高まっている傾向がうかがえ、働く女性のメンタルヘルス対策が重要な課題となっていることが浮き彫りになっています。
実務の現場から見ると、こうした背景には、いわゆる「感情労働」に伴う心理的負担や、ハラスメントの問題が深く関係していると考えられます。
医療や福祉の現場では、慢性的な人手不足による業務の過重化に加え、患者や利用者、その家族からの暴言や理不尽な要求に直面する場面も少なくありません。
白書においても、精神障害事案の出来事類型として「対人関係」に関するものが多くを占めており、顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた事案が増加していることが示されています。
女性の精神障害事案についても、長時間労働のみならず、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントなど、職場における対人関係の問題が背景として指摘されるケースが少なくありません。
こうした点からも、労働時間管理だけでは対応しきれないストレス要因が、現場に存在していることが読み取れます。
今回の白書が示す結果は、企業や医療機関に対し、従来の「労働時間の管理」を中心とした対策だけでは、従業員の心身の健康を十分に守ることが難しいことを示唆しています。
特に医療・福祉業界においては、現場スタッフが抱える精神的負担を個人の問題として捉えるのではなく、組織全体で支える体制づくりが不可欠です。
ハラスメント相談窓口の実効性を高めることや、カスタマーハラスメントに対して組織として明確な対応方針を示すことなど、現場で働く職員が孤立しない環境整備が求められています。
働く人の属性や職場の特性に応じた、きめ細かなメンタルヘルス対策が、人材の定着と組織の安定にとって、今後ますます重要な要素となっていくでしょう。

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