男女の賃金差異の公表が拡大へ――算出ルールの明確化と「説明」が問われる時代に
- Takashi Fukunaga
- 2025年12月26日
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女性活躍推進法に基づき、一定規模以上の企業に義務付けられている男女の賃金差異の情報公表について、厚生労働省は算出・公表方法を示す通知等により、算定ルールや公表の考え方を整理しています。
これまでは常時雇用する労働者が301人以上の企業を対象として、全労働者、正規雇用労働者、非正規雇用労働者の3区分における賃金の差異を公表することが求められてきました。
そして、2026年4月1日施行の改正により、101人以上300人以下の企業についても、男女間賃金差異が情報公表の必須項目となります。
算出・公表方法がより明確になることで、企業間での比較可能性を高めるとともに、数値だけが独り歩きしない形での情報公開が進むことが期待されます。
通知等では、賃金差異の算定にあたっての計算ルールが示されています。
対象となる「賃金」は、基本給に限られず、賞与や諸手当、残業代等を含む、労働の対償として支払われる賃金の総額を用いる整理が基本となります。
一方で、通勤手当など一部の手当については事業主の判断で算定対象から除外することも可能ですが、その場合でも男女で共通の取り扱いとするなど、恣意的な運用にならないよう留意することが重要です。
また、パートタイム労働者など短時間労働者が多い企業では、算定にあたり、労働時間を参考に人員を換算して算出する方法を用いることもできます。
ただし、その方法を採った場合は、重要な前提条件として注記し、閲覧者が数値を適切に理解できるようにすることが求められます。
さらに注目すべきは、数値公表にあわせて、背景事情を説明することの重要性が強調されている点です。
賃金差異が生じる要因としては、管理職比率の差、平均勤続年数の違い、職種構成の偏りなど、さまざまな要素が考えられます。
そのため、公表は単なる差異の提示にとどまらず、企業が自ら要因を分析し、どのような課題認識を持ち、解消に向けて何に取り組むのかを、可能な範囲で説明していくことが望ましいとされています。
企業にとって、男女間の賃金差異を可視化し、その背景を対外的に整理して示すことは、人的資本経営の透明性を高める重要なプロセスです。
投資家や求職者は、数値の大小だけではなく、企業が格差をどう捉え、どのようなキャリア支援や評価制度の改善を進めているのかという姿勢にも注目しています。
公表を適切に行い、背景事情や改善の方向性を丁寧に示すことは、優秀な人材の確保や組織の多様性推進の基盤となる一方、説明が不十分なまま数値だけが提示されると、誤解を招きやすい点にも注意が必要です。
また、今回の整理は、企業が自社の賃金体系や人事制度を再点検する貴重な機会でもあります。
公表に向けたデータ集計の過程で、意図しない処遇の不均衡や、女性の昇進・登用を阻害している構造的課題が見えやすくなることもあります。
公表を単なる法的義務の履行として終わらせるのではなく、組織内の課題を把握し、誰もが能力を発揮できる公平な職場環境を構築するためのツールとして活用することが、今後の企業経営においてますます重要になっていくでしょう。

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