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労災認定結果は事業主に通知すべきか――揺れる制度見直しの行方

  • Takashi Fukunaga
  • 2025年12月18日
  • 読了時間: 3分

労働者災害補償保険法(いわゆる労災保険法)の見直しに向けた議論の中で、労災認定の結果を事業主に通知するかどうかという論点が、大きな注目を集めています。


現在、従業員が労災を申請した場合、労働基準監督署による調査を経て行われる支給・不支給の決定は、原則として申請者である労働者本人にのみ通知されます。

事業主に対して、認定結果そのものが制度上当然に通知される仕組みはありません。

そのため、労働者本人から報告を受けたり、メリット制による保険料率への影響などを通じて、結果を間接的に把握することになる場合がある、というのが現状です。


こうした運用を見直し、事業主への通知を制度として位置づける案が、厚生労働省の審議会で検討されています。

しかし、この点については労使の意見が大きく分かれています。


経営側は、事業主への通知は不可欠であるとの立場を取っています。

企業には、労働契約法に基づく安全配慮義務があり、労働災害の再発防止策を講じる責任があります。

しかし、そもそも当該事案が労災と認定されたのかどうかが分からなければ、原因分析や再発防止策の検討、さらには職場復帰支援を適切に行うことが難しい、という考え方です。


一方、労働側は、通知制度の導入に対して慎重、あるいは反対の姿勢を示しています。

特に強く懸念されているのが、精神障害やハラスメントに関連する事案です。

仮に「不支給」という結果が事業主に伝わった場合、それが「病気そのものが否定された」「会社の責任はなかった」と受け止められ、職場での不利益な取り扱いや、二次的なハラスメントにつながるおそれがある、という指摘がなされています。


実務の現場から見ても、この問題は、企業の管理責任と、労働者個人のプライバシー保護という、相反する重要な利益が正面から衝突するテーマだと感じます。

実際、認定結果が分からないままでは、休職期間の取り扱いや復職の可否判断に迷うケースが生じることもあります。

そのため、一定の情報共有の必要性そのものを否定することはできません。


ただし、仮に事業主への通知が制度化されるとしても、通知される情報の範囲は必要最小限にとどめることが求められます。

また、その情報が不適切に利用されることのないよう、事業主側に対して厳格な守秘義務や目的外利用の禁止を課すなど、労働者が安心して労災申請を行える環境を守るための仕組みが不可欠でしょう。


今後の法改正議論において、この難しい問題がどのような形で整理されていくのか。

実務に携わる立場として、その行方を引き続き慎重に見守っていく必要がありそうです。

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