協会けんぽ「電子申請サービス」開始に向けた重要な注意点
- Takashi Fukunaga
- 2025年12月17日
- 読了時間: 3分
令和8年(2026年)1月13日から、全国健康保険協会(協会けんぽ)独自の「電子申請サービス」が開始される予定です。
この新サービスについて、実務上きわめて重要な注意点があり、誤解したまま制度開始を迎えると、現場が混乱するおそれがあります。
現時点で公表されている仕様によると、この電子申請サービスを利用できるのは、被保険者本人(従業員本人)、一部の手続きにおける被扶養者本人、そして社会保険労務士に限られています。
事業主(会社)が自社のアカウントでログインし、従業員に代わって申請を行う仕組みは想定されていません。
ここが今回、特に誤解されやすいポイントです。
これまで、傷病手当金や出産手当金などの申請では、従業員が申請書を記入し、事業主が勤務状況や賃金支払状況などの証明欄を記入したうえで、会社が取りまとめて協会けんぽへ郵送する、という運用が一般的でした。
しかし、新たに導入される電子申請サービスでは、被保険者本人がマイナンバーカードによる認証を行い、自身のスマートフォンやパソコンから、直接協会けんぽへ申請データを送信することが基本となります。
会社の人事担当者が、会社のIDでログインし、従業員に代わって申請内容を入力・送信することはできません。
電子申請になったからといって、事業主の関与が不要になるわけではありません。
勤務状況や賃金支払状況など、従来どおり事業主が証明すべき事項は引き続き存在します。
ただし、新システム上の流れとしては、事業主が紙で証明書を作成し従業員に渡し、従業員がそれをスマートフォン等で撮影・アップロードして申請する、といった形が想定されています。
「会社で一括して電子申請ができるようになる」と思われがちですが、実際にはそうではありません。
従業員自身によるセルフ申請を促すか、委任を受けた社会保険労務士に依頼しない限り、会社側のアカウントで電子申請を完結させることはできない仕組みです。
なお、社会保険労務士が代理で電子申請を行う場合には、被保険者本人からの委任が必要となる点も、実務上の重要な注意点です。
企業の実務担当者としては、制度開始に向けて、従業員が自分でスマートフォンから申請できるよう案内文や簡易マニュアルを整備すること、電子申請が難しい従業員への紙申請対応のルールを整理すること、事業主証明書の作成・交付方法を見直すことなどが求められます。
協会けんぽの電子申請サービスは、「事業主が便利に一括で電子申請できる制度」ではなく、「従業員本人のセルフ申請を前提とした制度」です。
この前提を正しく理解したうえで、令和8年1月以降の業務フローを今から再構築しておくことが、現場の混乱を防ぐために重要だといえるでしょう。

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