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令和6年度監督指導結果から考える

  • Takashi Fukunaga
  • 11月8日
  • 読了時間: 2分

厚生労働省は、令和6年度に実施した「長時間労働が疑われる事業場」に対する監督指導の結果を公表しました。

対象となった26,512か所のうち、実に21,495か所(約81%)で労働基準関係法令違反が確認され、その中でも違法な時間外・休日労働があった事業場は11,230か所(全体の42.4%)にのぼりました。

これは、いまだに多くの現場で長時間労働が常態化している現実を示す、非常に重い数字です。


違反内容の上位には「違法な時間外・休日労働」のほか、「労働時間の把握不備」「割増賃金の未払い」「健康診断未実施」などが並びます。

これらはいずれも、労働時間管理や安全衛生体制といった、企業が最も基本的に整備すべき分野での問題です。

特に、過重労働が原因で健康障害や労災につながるケースが後を絶たない中、行政としても「働き方改革」の一環として監督体制を強化していることがうかがえます。


社会保険労務士の立場から見ると、今回の報告が示す課題は大きく三つに整理できます。

第一に、労働時間の実態把握が不十分な事業場の多さです。

いまだに「自己申告制」に頼る運用が残っており、結果として実労働時間が正確に把握できていないケースが散見されると想定されます。

タイムカードやPCログ、入退室記録など、複数データを突き合わせる「客観的把握」が不可欠です。


第二に、36協定の形骸化です。

協定の締結自体は行っていても、実際の運用や上限時間を超える残業が続いている場合は、労使ともに責任が問われます。

特に特別条項付き協定の乱用は、今後より厳しく監視されると考えられます。


第三に、管理職層の意識改革の遅れです。

残業削減の取組みを「単なるコストカット」と捉えるのではなく、「生産性の向上」「人材の定着」「健康経営」へと結びつける発想が求められます。

実務の現場では、上司が部下の労働時間をきちんと把握し、声をかける文化を育てることが重要です。


今回の結果を受け、今後も行政は重点監督を強化していくとみられます。

企業としては、年末に向けて繁忙期に入るこの時期こそ、時間外労働の管理体制を総点検する好機です。

就業規則や36協定、勤怠記録、健康診断実施状況などを今一度見直し、是正すべき点を明確にしておくことが、労使双方にとってのリスクヘッジになります。


「働き方改革」は、一過性のスローガンではなく、企業の信頼性を支える基盤づくりです。

現場に寄り添う社労士として、引き続き“実効性のある働き方の見直し”を支援していきたいと思います。

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